コードバンの手入れにアビィレザースティックは必要なのか?
店長青山です、
コードヴァンの革靴をお手入れする道具の一つに
という物があります。
このスティック、コードバンの革の表面をこすってツヤを出すための道具です。
ただ、コードバン革靴のお手入れでこのようなスティックを使用している方はそこまで多くないように思います。
コードバンの革靴だけで数十足持っているという方でさえ
「一度も使ったことがない」
と言われたりするのです。
それどころか、
「 コードバンをこする必要性を全く感じない 」
と言ってスティックの存在に否定的な方も実際にいるくらいです。
このコードバン皮革用のスティック。果たして本当にお手入れの際に必要なのでしょうか?
今回はその辺りを検証したいと思います。
コードバン独特のツヤはどうやって出しているのか?
で、あなたはコードバンの革靴がお好きだったとします。それでは、なぜお好きなのか教えて頂けますか?
恐らくなのですが、ほとんどの方は
「コードバンだけが持ちうる独特の美しいツヤ、輝き」
と答えられる事と思います。
もちろん、「コードバン革靴の履き心地が好き」という理由もある事でしょう。
しかし、
「同様の履き心地の靴があったとして、カーフレザーと同じ見た目の革靴をコードバンほど高額の値段で購入するか?」
と言われたらはなはだ疑問です。やっぱりコードバンの革だけが持つ特有のツヤ感が魅力の一つであるのは間違いのない事実だと思うんですね。
ではあなたはこのコードヴァン特有のツヤはどのようにして出しているかご存知ですか?
それはですね、
「Glazing (グレージング) 」
という作業をおこなってこの光沢感を出しているのです。
【ALDEN】のコードバンを製造している『Horween』社の作業風景
下の動画は【ALDEN】にコードバンを提供している『Horween Leather Co.』におけるグレージングの風景です。このグレージングの作業によってコードバンが驚くほど輝き始める様が見て取れます。
とても興味深い動画です。40秒ほどで終わりますので是非一度ご覧になってみて下さい。
コードバンでいうグレージングとは何かというと
ガラスやメノウなどで出来た硬質なローラーを使用して革の表面をこする事
になります。
こする際に生じる摩擦の熱によってコードバンの表面に立っている繊維を寝かしつけてツヤを出します。グレージングの現場では革が焼けるような匂いがすると言います。
かなり強い圧力をかける事で革を焼くようにしてツヤを出すのです。
つまり、コードバン独特のツヤ感は、
「表面をこする事によって出されている」
というのが事実になります。
グレージングでしかコードバンのツヤは出せない
動画を見ても明らかなようにコードバンの輝きは【 グレージング 】で出来ています。商品化されたときに保有していたあのコードバン特有のツヤ感はこする事でしか表現できません。
あなたが、コードバンの皮革が持つ独特のツヤ感が好きと言っているならば、
「スティックでこする必要性を否定できない」
という事になるのです。
「コードバンの独特のツヤ感が好き!」
と感じるのであれば、それを表現するためにスティックでこするお手入れを否定する事はできません。
元々、「コードバンのツヤは革をこする事で仕上げられている」という事実を覚えておいてください。
【ABBEY LEATHER STICK】はコードバンに必要不可欠なのか?
で、結局 アビィ レザースティックは必要なのか、そうではないのか、という事なのですが正直言って
「あってもなくても、どちらでもいい」
と思います。
ここまで引っ張っておきながら何だ!と思われるかもしれませんが。(笑)
革靴のお手入れに正解、不正解はないと思いますし、アビィレザースティックを使っても使わなくてもコードバン革靴のお手入れはできます。
ただ、お手入れの際にこのスティックがあると輝きを出すのに便利、という事は間違いないと思います。
アビィスティックの代用品でもコードバンの手入れは可能か?
ネット上では、このアビィスティックの代わりに
「プラスティックの棒でやっている」
「かっさ棒とか他のアイテムで代用しても大差がない」
というようなブログ記事やレビューが出ています。しかし、
アビィスティックがどのように製造されているのかを、きちんと取材して書かれて記事は見た事がありません。
おおよそ記事を書いている人の主観だけが述べられている状態です。
それはそれで正しいブログの在り方だとは思いますが、あまりに客観性に欠けた、偏った情報のようにも思われます。
店長青山は正しく客観的な情報を得る為に、アビィレザースティックの日本代理店【R&D】社まで実際に足を運んでいます。そしてシューケアマイスターの方に直接会ってABBEY LEATHER STICKの詳細を聞いてきています。
このアビィレザースティックはコードバン皮革の表面を磨くために
【 天然素材の水牛の角をアビィホーン社にて特殊に研磨したもの 】
だそうです。熟練の職人が一本一本手作業で削っているため、大量生産できません。
下の動画はアビィホーン社の動画です。実際の作業風景が垣間見れます。
肉眼では確認できませんがアビィスティックの表面は特殊に研磨されているので、他の物とは滑らかさが違います。
もし、同じように見えるからと言ってその辺にあるプラスティックの棒などを使用するとどうなるか?
高額なコードヴァンの革靴の表面に目に見えない傷をたくさんつける結果になるかもしれません。
いずれは、コードヴァンの革靴の寿命に関わってきます。せっかくお手入れしているのにそれでは全くの本末転倒です。
多少お値段はしますが、コードバンの革靴をお持ちなのであればアビィレザースティックを手に入れておいて絶対に損はしません。
かっさ棒は【ABBEY LEATHER STICK】の代わりになるか?
そして、インターネットの販売サイトを見ると「アビィレザースティック」との表記を併用して「かっさ棒」なるものが販売されています。
水牛の角を使っているので「アビィレザースティック」の代用品になるという事のようです。
「実際に代用品になるのか?」と問われれば、「おそらく、代用品にはなる」と思います。使った事が無いので確かな事は分かりませんが。
不思議なのは代用品になるにもかかわらず、なぜ「かっさ棒」を紹介するページに必ず「アビィレザースティック」と表記されているのか?という事ですね。
コードバンを光らせる事ができるなら胸を張って「かっさ棒」だけで記事を書いて紹介すればいい話だと思うんです。
でも、そうはならない。。なぜなのか?
そもそもあなたの人生にコードバンの革靴は必要ですか?
実は皆さん、本当は【ABBEY LEATHER STICK】を使用したいようなんですね。じゃあ、なんでアビィレザースティックを使わないのかというと
「本当はアビィレザースティックの方が欲しいけど、値段が高いからかっさ棒で代用している」
という事のようです。
「わざわざ高いアビィレザースティックを買わなくても、値段の安いかっさ棒で充分に事が足りるのだから必要ない。同じ水牛の角ならアビィスティックなんてあんな高い物、買うのは無駄だ!」
という考え方のようです。まったくもって、ごもっともな意見ではあります。
しかし、ちょっと考えてみて下さい。「値段が高いから必要ない!他の物で代用する!それで充分!」という事であれば
「あなたの人生にそもそもコードバンの革靴は必要ですか?」
という事なりませんか?その考えで行くと革靴だったら何もコードバンである必要はないのではありませんか?
なぜ、あなたがコードバンの革靴にしたのかというと「欲しかったから」ですよね。このあなたの人生の楽しみのための価格がコードバンのお値段なのだと思います。
イギリスで1749年に創業された歴史ある会社
確かにアビィレザースティックは普通のかっさ棒より値段が高いかもしれません。
しかし、アビィホーン社は【The Horn Works】として1749年にイギリスのウスターシャービュードリーで創業された歴史ある会社です。
創業270年にもなる歴史あるイギリスの老舗が
コードバンの為に特殊に研磨した品が【ABBEY LEATHER STICK】
なのです。
先ほどの動画の製造風景をご覧になりましたか? 熟練のイギリス職人が一本一本手作業で水牛の角を削っていましたね。あのようにして作られている製品が【ABBEY LEATHER STICK】です。
中国の工場で大量生産された「ツボ押し用のかっさ棒」と同じではないのです。
かっさ棒の販売サイトなどを見ると
「天然の水牛角を使用しているため、 細かい傷跡がある場合がございます。」
などと記載がされています。ですが、表面に傷のある水牛の角でコードバンの表面を擦ったらどうなるでしょう。
基本的にコードバンの皮革は丈夫なのですが、実は弱点があります。革繊維の構造的に、表面がひっかかれて傷ができると亀裂が入り、いとも簡単にそこから裂けてきてしまうのです。
「細かい傷跡があるかもしれませんよ?」と言われている棒など、自分だったら恐ろしくてコードバンの革靴などに使用できません。
いかがでしょうか?
アビィレザースティックにも、かっさ棒にもどちらにもメリットやデメリットがあります。
どちらが良いという事ではありませんが、
【値段だけで判断する事なく、あなたにとって正しくて必要な情報をきちんと得る】
このように考える事が大切だと思います。
正しい情報や知識を得た後に、必要なアイテムを購入をした方が賢明な判断ができるのではないでしょうか?
そしてその判断にあなたの人生にとっての楽しみが加わっていたら、コードバンの革靴を磨く楽しみが何倍にも膨れ上がる事でしょう。
それではまた!
※ お勧め参考記事
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一生モノの最高級靴べらブランド【ABBEY SHOE HORN】
合わせてお読み頂くと今回のアイテムに対する理解がより一層深まります。