間違えやすいレザーソールにハーフラバーを貼る理由

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店長青山です、

先日の大雪は東京でもかなり積もりましたね。

 

当日だけでなく、翌日以降凍った地面で革靴を履いていて困った方も多かったと聞きます。

 

このような時にお客様から頂くのが

 

「レザーソールの革靴にはゴム製のハーフソールを貼った方がいいのか?」

 

というご質問です。

 

なぜ、そのように思われるのかを聞いてみると

 

「ハーフラバーを貼った方が靴が滑りにくくなるから」

 

というお考えのようです。

 

この

 

「革底にハーフラバーを貼るべきなのか、そうではないのか?」

 

というのはよく聞かれる問題です。

 

さて、あなたはどう思われますか?

 

店長青山の見解を先にお伝えしておくと

 

「ハーフラバーを張る一番の目的を滑り止めにするべきではない

 

という意見です。

 

それについて今回は詳しくお伝えしていこうと思います。

 

革底にゴムのハーフソールを貼る目的

 

ここでちょっと想像してみて下さい。

 

あなたは美味しい

 

「塩ラーメン」

 

が食べたくなったとします。

 

街に出て塩ラーメンが食べられる店を探していたら二つのお店がありました。

 

一つのお店は塩ラーメン専門店です。

 

「うちはメニューに塩ラーメンか、塩のつけ麺しかないよ!」

 

という店。

 

もう一つは定食屋さんです。

 

「塩ラーメン?ありますよ!

 

ラーメンは塩としょうゆと味噌と豚骨があって、つけめんもできます。

 

蕎麦もカレーもスパゲッティもあるしハンバーガーやオムライス、唐揚げもお子様ランチもあります。

 

先週からケーキセットも始めました!」

 

と、いうお店。

 

あなただったら、どちらの店に行くか迷いますか?

 

普通に考えたら

 

「塩ラーメン専門店」

 

ですよね?

 

なぜならば目的は

 

「美味しい塩ラーメンを食べる事」

 

だからです。

 

迷いようがありません。

 

でも、

 

「カレーと唐揚げ、お子様ランチとケーキセットも美味しそうだし何を食べていいのか分からない!」

 

とあれもこれも求めて迷っていたら、定食屋さんに行くと思います。

 

ただ、定食屋さんの塩ラーメンは専門店より絶対に美味しくないでしょうけどね。

 

目的が一つに定まっていないから塩ラーメンが美味しくない定食屋さんへ行ってしまうのです。

 

これと一緒でハーフソールを革靴に貼った方がいいのかどうか迷っている人は、貼る目的が一つに絞られていません。

 

目的を一つに絞れば自分の革靴にハーフラバーを貼った方がいいのか、そうではないのかが自ずと答えが出てきます。

 

そして、今回はここでハーフラバーを貼るための指針をお伝えします。

 

あくまでも店長青山の個人的な見解ですので全ての方の革靴に対して正しい訳ではありません。

 

それを踏まえた上で参考にして下さい。

 

ハーフラバーを革靴に貼る一番の目的は

 

「レザーソールの減り防止」

 

に絞るべきなのです。

 

ハーフラバーは

 

「革底の耐久性を高める」

 

為に貼る事を目的の一番にしてみて下さい。

 

そう考えれば自ずと答えはでてきます。

 

ハーフラバーは滑り止めにならないのか?

 

このようにお伝えすると

 

「ハーフラバーは滑り止めにならないのかっ!?

実際に滑らないじゃないか?

お前はおかしい!間違っている!!」

 

というご意見が必ず出てくると思いますので言っておきますが

 

レザーソールにハーフラバーを貼った方が滑り防止になります。

 

レザーソールにハーフラバーを貼った方が貼らないよりは確実に滑らなくなります。

 

レザーよりゴムの方が地面をとらえるグリップ力が高いので貼った方が滑らなくなるのは事実です。

 

ですので、滑り止めとしての効果は実際にあります。

 

誤解しないで頂きたいのですが店長青山が言いたいのは

 

「ハーフラバーを貼る一番の目的を滑り止めにしない」

 

という事なのです。

 

何故か?

 

ここで少し考えてみて下さい。

 

革靴に限らずともあなたは今までに歩いていて滑ってしまった事が、一度や二度はあると思います。

 

その時なのですが、どのようなシチュエーションでしたか?

 

よーく、思い出してみて下さい。

 

恐らくなのですが

 

「歩いていて一歩踏み出した足が地面に着地した瞬間に滑った」

 

のではありませんでしたか?

 

多くの場合、歩いていて滑るのはこのような状態の時だと思います。

 

前に踏み出した足に体重が移動する過程で、靴が滑ってバランスを崩したり転んだりする事が多いのです。

 

歩行の際に

 

「後ろに残した足が滑った事が原因で転倒」

 

このようなケースはほとんどないと思います。

 

では、

 

「歩いていて前に送り出した足が滑った時」

 

何が起きているのかもう少し考えてみます。

 

靴が滑るのは実を言うとほとんどの場合において踏み出した前の足が

 

「地面に着地した瞬間」

 

です。

 

前足に完全に体重が移動してから滑る事はあまりありません。

 

と、いう事は何が起こっているかというとほとんどの場合

 

靴のカカトが地面についた瞬間に滑り始めている

 

のです。

 

あなたは普段、歩いている時につま先から着地していますか?

 

違いますよね?

 

人間はかかとから着地して足の裏全体で地面をとらえてから、

反対の後ろ足を前に送り出した後、

つま先で地面を蹴って次の一歩に移っていきます。

 

この事で何をあなたにお伝えしたいのかというと、

 

靴が滑る時というのは

 

靴の前半分が地面に接地するより前にすでにカカトでコケている

 

という事なのです。

 

わかりますか?

 

靴底の前半分がレザーだろうがラバーだろうが関係なく、カカトの着地段階ですでに滑っている

 

この場合が大多数、という事実なのです。

 

滑り止めを目的としてゴムのハーフソールを靴底の前半分に貼ったとしましょう。

 

しかし、その部分が着地する前にすでにカカトでコケてしまっていてはラバーの意味は全くありません。

 

「靴が滑るのを防止する」

 

これを一番の目的とするならばハーフラバーを貼る事よりもまず優先して考えるべき事は

 

カカトが滑らないようにする事

 

なのです。

 

ハーフラバーを考えるのはその後です。

 

カカトのトップリフトをラバーに変える

 

もし、靴の滑り防止を考えるのであればまずはカカトのトップリフトが滑らないか確認して下さい。

 

トップリフトというのはカカト部分で地面に接地する位置についている部品の事です。

 

この部分が減ってしまってたり極端に削れてしまっていると、それが原因で靴が滑る事にもつながります。

 

トップリフトは通常、ゴム製の物で出来ていますが中にはレザーで出来ていたり、半分だけがゴムのカカトになっている革靴があります。

 

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ビンテージの革靴でよくあるのが【V-Cleat】とよばれる三角形の金属製の部品が付いている物です。

 

これは歩く際に非常に滑りやすいので滑り防止の意味ではゴムのトップリフトに変えた方がいいでしょう。

 

ビンテージの【V-Cleat】は雰囲気があって本当にカッコイイです。

 

しかし正直に言えばゴム製のトップリフトの方が歩きやすいのは事実です。

 

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また、カカトに金属製のヘリ止めを装着していると、カカトの減りを押さえる効果はとても高いのですが非常に滑ります。

 

そして、現代の革靴でも高級な靴になるほどよくみられるのが、カカトの半分だけがゴムになっている仕様の物です。

 

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このようなカカトの形状の場合、ハーフラバーを靴底の前面に装着するよりも、カカトの全面をゴム製のトップリフトに替えた方が滑り防止の観点からすると効果が高いと思います。

 

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このようにかかとが全てゴムでできたトップリフトに替えた方が滑り防止の意味では費用対効果も高いはずです。

 

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もしこのようなレザーソールの革靴を滑りにくくしたい場合は、まず、カカトをゴム製の物に変えてからハーフラバーを貼る事を考えてみて下さい。

 

改めてお伝えしておきますがゴム製のハーフソールに滑り止めの意味がない、と言っている訳ではありません。

 

ハーフラバーにすればレザーソールの革靴が滑りにくくなります。

 

これは確実に効果があります。

 

しかし、それを考える前にまずはカカトのトップリフトをチェックしてみて下さいね、という事なのです。

 

この順序を守ったほうがお金をかけずとも、滑り止めの効果が高くなります。

 

革底にハーフラバーを貼るメリット

 

では、レザーソールにゴムのハーフソールを貼る一番のメリットについてです。

 

これは先にもお伝えしましたが

 

●革底の減りを防止する
●レザーソールを長持ちさせる

 

という効果が最も期待できる役割であると店長青山は考えています。

 

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特にグットイヤーウェルテッド製法などで作られている革靴の場合、靴底には出し縫いと呼ばれる糸が出ています。

 

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セメンテッド製法などソールを接着剤で貼り付けている以外の革靴であればこのような出し縫い糸が見える事が多いと思います。

 

ここにラバーのハーフソールを上から貼る事によって、このステッチをゴムで被せて隠す事が出来ます。

 

この糸は歩行の際の摩耗によって履いているうちに切れてきてしまう箇所だからです。

 

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なので、ハーフラバーを貼る事により保護する事が出来れば靴底も長持ちするのです。

 

ただ、出し縫いの下糸が一部切れたからといって靴底がすぐに剥がれてしまうかというとそんなことはありません。

 

糸が切れているからといって全ての靴をすぐにハーフラバーにする必要はないのです。

 

その必要はないのですが、でも、糸が切れないに越したことはありませんので保護するメリットは大きいと思います。

 

ゴム製のハーフソールは革に比べて耐久性もあるので、アウトソールが減ってきて薄くなるのを防止する事もできます。

 

「アウトソールを長持ちさせる」

 

これが靴底の表面にラバーを貼る一番のメリットであると店長青山的には考えています。

 

ハーフラバーを貼るタイミング 新品の靴にはありなのか?

 

ここまでで、ハーフラバーをレザーソールに貼るメリットというのはお分かり頂けたかと思います。

 

では

 

「ハーフラバーをレザーソールに貼ると長持ちする事は分かった。じゃあ、一体いつ、どのタイミングで貼ればいいんだ?」

 

という事になると思うのですがこれは「お好きなタイミング」で、としかお伝えしようがありません。

 

せっかくのレザーソールですしその革靴本来の履き心地を楽しみたいという気持ちもあるでしょう。

 

ですので、

 

「最初のうちしばらくは、レザーソールの履き心地をオリジナルで楽しんでからハーフラバーを貼る」

 

というタイミングもとてもいいかと思います。

 

逆に、

 

「ハーフラバーを張る一番の目的はアウトソールの保護だから新品の状態で貼るべきなのでは?」

 

というご意見もあるかと思います。

 

全くもっておっしゃる通りです。

 

アウトソールを長持ちさせる事を考えるのであれば、新品の状態で貼るというタイミングが一番いいと思います。

 

新品の状態でハーフラバーを貼る事にはもう一つメリットがあってそれは

 

「つま先が削れていない状態」

 

の段階でラバーを貼る事ができるという点です。

 

革靴を新品からおろして履く時に最も早くアウトソールで削れてしまうのはつま先です。

 

レザーソールの返りがまだついていない状態から歩くので、どうしてもつま先が削れて行きます。

 

堅牢なダブルソールの靴やトリッカーズなどのアウトソールが硬い靴などは、あっという間に革のつま先が削れる事となります。

 

このつま先の削れ具合が大きくなった後にハーフソールを貼ろうとすると、まず、そのつま先の削れた分を補修してからラバーを貼る必要があります。

 

そうすると、ハーフソールの工賃プラス、つま先の補修分のコストがかかるので、お金が余分にかかってしまう事になるのです。

 

新品からハーフソールを貼るとつま先の削れを気にしなくて良い、というのが一つのメリットと言えるでしょう。

 

なので、この辺りはあなたのお好みで、という風にお伝えしておきます。

 

ちなみに、

 

『新品の状態でラバーソールを貼るとソールの返りが悪くなる』

 

というデメリットを挙げる方がいます。

 

確かにそういった面は否定できません。

 

ですが、この新品の靴に対するアウトソールの返りについてはハッキリ言って

 

日本人の認識が完全に間違っている

 

と、店長青山は考えています。

 

新品の靴の返りについて店長青山と同じ考えで実際に同じように実践している、

 

というお客様には今まで出会った事がありません。

 

その内容についてはこちらの記事で詳しく記載していますので読んでおいて下さい。

 

leathersole-bend
新品の靴の返りが悪い原因は全てあなたです

ハーフソールを貼る目的は減り防止

 

革靴のお手入れの際にも言える事なのですが、靴に対して行うケアに対して目的をきちんと明確にしておく必要があります。

 

店長青山的にはハーフラバーを貼るのであればレザーソールのヘリ防止を目的にする事をお勧めいたします。

 

これを無視してあれもこれもと、幾つもの役割をハーフソールに求めるとトンチンカンな事になります。

 

例えばこれも結構よくある話なのですが

 

ハーフラバーを貼ると靴の通気性が無くなるからハーフソールはレザーで行う

 

という方がいます。

 

革のハーフソールが悪いというわけではありません。

 

レザーのハーフソールに通気性を求めている事が問題なのです。

 

いいでしょうか?

 

ハーフソールというのは貼るものがゴムであれ、革であれレザーのソールに対して

 

「接着剤を使用して貼り付ける」

 

物なのです。

 

取り付ける部分に対して一面全部に接着剤を塗りつけてからハーフソールを貼って乾かします。

 

そうするとどうなると思いますか?

 

革そのもの自体には通気性がありますが固まった接着剤には通気性がありません。

 

なので、革だろうがゴムだろうが関係なく接着面の部分で通気性は期待できないのです。

 

通気性を求めるのであればハーフソールではなく、オールソール交換にすべきです。

 

これも、ハーフソールに減り防止以外の目的を同時に求めた結果やってしまう間違いです。

 

後、これも

実際にお客様から相談されたお話

なのですが

 

「滑り止め防止のために革靴にゴムのステッカーを貼るのはどうでしょうか?」

 

というご質問を頂いた事があります。

 

滑り止め防止ステッカーですね。

 

「悪くはないと思いますし、それでお客様がご満足なら良いと思います。自分で貼ればコストもかからないと思いますし。

 

ただ、滑り止めが一番の目的でゴムを付けるならハーフラバーの方がまだ面積が大きくて良いのではないでしょうか?」

 

と、お伝えしました。

 

本来、ハーフラバーは減り防止で取り付けるのを目的としたい所です。

 

ですが、

 

ゴムを取り付けて靴を滑らなくするのがお客様の第一目的であれば、ステッカーより面積の大きいラバーソールの方が良いかと思うからです。

 

「ステッカーではアウトソールの前面全てをカバーできませんし、どうせならハーフラバーで革底を保護してしまってはいかがですか?」

 

とお伝えしました。

 

そうすると

 

「ハーフラバーではソールの返りが悪くなるし、ステッカーの方が返りが良いので」

 

と言われます。

 

「返りというのは歩行の際に靴が屈曲する事によって生じるものなので、貼り付けた物体その物が原因でそうそうステッカーとの差が出る事でもないかとは思うのですが・・・。

と、言うより返りが欲しいのであれば靴を手で曲げてから履けばよいのではありませんか?」

 

とお伝えすると、

 

「最初はステッカーを貼って後でハーフラバーにするつもりです。」

 

と、おっしゃられました。

 

お客様がそれでご満足ならば良いと思いますし、当店でハーフラバーを請け負っている訳ではありませんのでそれ以上、深く掘り下げる事はしませんでした。

 

ですが、最初にステッカーを取り付けてから後で剥がしてハーフラバーをまた貼るというのはどうにも、二度手間のような気がします。

 

ステッカー代もかかりますしハーフラバーまでの間ステッチの糸は保護できません。

 

修理屋さんに頼むのであれば結局2回分の工賃代がかかる事になります。

 

「一人のお客から1足で2回金を取ってやろう」

 

という事でチェーン店の修理屋さんに言われたのであればすごく可哀想です。

 

これも革靴に対して行う施策の目的がぶれてしまっている例だと思います。

 

ゴムを張る事で滑らなくしたいのであれば最初からハーフラバーでもいいかと思いますし、

 

返りを良くしたいのであればこちらの方法で簡単に解決できます。

 

※新品の靴の返りが悪い原因

 

と、いう事で今回はレザーソールに対するハーフラバーについてお伝えしてきました。

 

レザーソールというのは革靴を履く醍醐味の一つだと考えています。

 

ハーフソールを貼るにしても、そのままの履き心地を味わうにしても、ご自身の目的をしっかり持ってケアして頂けると長く楽しめると
思います。

 

是非、ご自身の革靴でいろいろと試してみて下さい。

 

それではまた!

 

※ お勧め参考記事

leather-sole
【決定版!革底のお手入れについて】

 

合わせてお読み頂くと今回のお手入れに対する理解がより一層深まります。