レザーソールの返りが悪い原因
店長青山です、
お客様からよく頂くお悩みの中にこのようなものがあります。
「新品の革靴を履き始めたけどソールの返りが悪くて革底のつま先がすぐに削れる」
というものです。
本当によく聞くお悩みなのです。
ですが、実際に話を聞いてみるとレザーソールの返りを良くするためにしなくてはいけない事を最初からしている人は一人もいません。
本当です。
今までのお客様の中で
「新品の革靴の返りを良くするためにしなくてはいけないな」
と店長青山が考えている事を行っていた人は
誰一人としていません。
誤解を恐れず言わせてもらえれば
新品の靴の返りが悪い原因は全てあなたにある
のです。
それは一体なぜなのか?
今回は新品の靴の返りについてお伝えしていこうと思います。
欧米人の革靴を日本人が履く矛盾
まず革靴の「返り」についてです。
靴を履いて歩く際には甲の部分が屈曲して靴の底が反り返り、また元に戻りますね。
この時の靴の曲がり具合の事を「返り」と言います。
この反り具合が硬すぎても柔らかすぎても歩きづらいので適度な「返り」が革靴には求められるのです。
そしておおよそ大体なのですが、新品の革靴の返りが悪いというお悩みがある方は海外のブランドの革靴を履いています。
アメリカとかイギリスのグットイヤーウェルテッド製法の革靴について言われる方が多いですね。
ここで少し考えてもらいたいのです。
欧米のシューメーカーの革靴というのは当然の事ですが、欧米人が履く為の靴として作られています。
基本的に欧米人の方というのは日本人よりも身体が大きく背が高く、体重が重いです。
想像してみて下さい。
身長187cmで95Kg。
足のサイズが29cmのアメリカ人が履く革靴。
アウトソールの全長は31cm以上あります。
そして身長169cmで56kg。
足のサイズが25cmの日本人が履く革靴。
アウトソールの全長は26.5cmぐらいです。
同じアメリカの革靴ブランドでロングウイングチップ、ダブルソールのモデルを選んだとしましょう。
同一モデルですので作りは一緒ですし、素材も同じです。
が、長さが違うのでシルエットが違います。
でも、同じモデルなのでレザーソールの厚みは一緒です。
ここまでいいでしょうか?
で、考えてみて下さい。
身体が大きく重い95Kgのアメリカ人が長さのあるアウトソールを履いて歩く時。
身体が小さくて軽い56Kgの日本人が短いアウトソーㇽの革靴を履いて歩く時。
でも
アウトソールの厚さは同じ
です。
どちらの靴の方がソールの返りが良くなると思いますか?
体重95Kgのアメリカ人が履く靴
体重56Kgの日本人が履く靴
どう考えても身体が大きくて重くてしかも、ソールの長さがあるアメリカ人の革靴の方が返りがよくなりますよね。
それだけ身体の重さとテコの原理で靴に屈曲の力がかかるからです。
いいでしょうか?
あなたが欧米ブランドの革靴を履いている場合、
革靴のアウトソールの返りが固くて悪いのではなくて
あなたの身体が軽くて小さい
のです。
欧米人に比べて
という話です。
たとえ日本人が履ける革靴のサイズであったとしてもその大きさの靴を履く欧米人は基本的に日本人より背が高くて体重があります。
欧米のメーカーの革靴は日本人に合わせて靴を作っていません。
それは欧米の方が履いたら丁度良く履ける革靴なのです。
欧米人用の品なのに日本人の自分を基準として革靴を見ている事にそもそも矛盾があります。
なのに
「ソールの返りが悪い、固い!つま先が削れるのが嫌だ!」
という事になっているのです。よく考えたらおかしな話です。
やたらと身体がデカくて身長2mで体重120Kgもあるアメリカ人が
「 日本の着物はみんな丈が短い!全部小さい!! 」
と文句を言っていたらおかしいでしょう?
「それは日本人に合わせて作られている着物なのであってあなたがデカいんですよ?」
という話ですよね。
なので、その点を踏まえた上でアウトソールの返りの硬さを語ってほしいと思います。
新品革靴のソールの返りを良くする方法
では、新品の革靴でレザーソールの返りを良くする方法をお伝えします。
靴を購入して自分の物となったらまず履く前に
思いっきり力を入れて革靴のレザーソールを曲げて下さい。
実際には歩行の際に靴が屈曲する程度で構わないかと思います。
手で曲げることに抵抗がある人は実際に足で履いて、ぐいぐいと甲の部分を折り曲げてアウトソールに癖をつけて下さい。
これだけでつま先の減りが驚くほど抑えられる事になります。
これは新品に限らず、現在履いている革靴の返りがよくないな、と感じたら行える方法です。
と、このように店長青山がお伝えすると
「新品の革靴にそれはちょっと・・・」
と、皆さん言います。
ですが、考えてみて下さい。
靴はもともと屈曲するものです。
足を守るための物ですし、歩行する時の道具ですから甲の部分が曲がってシワになるのは当たり前なのです。
それをですね。
「極力シワはつけたくない、でも、ソールの返りは良くしたい」
という事自体が矛盾しているのです。
新品の革靴を曲げる事だってなにも、店長青山が思い付きで無茶振りをしている訳ではありません。
欧米のビスポークブランドでは個人オーダーであつらえた靴を一番最初、試し履きしてもらう前に手で折り曲げてからお客様に渡す所だってあるくらいなんですよ。
なので、革靴の返りを良くしたいのであれば手で折り曲げてから履けばいいのです。
それを行わずしてレザーソールのつま先が削れてしまうのは当然です。
だって欧米人のための靴なのですから。
あなたが求めている
目的を一つに絞って下さい。
それが分かれば行うべき事が分かります。
「つま先が削れるのが嫌だ!レザーソールの返りを良くしたい!」
というのであれば革靴を折り曲げて予め癖をつけておけばいいだけの話です。
理解できましたでしょうか?
ソールモイスチャライザーで革底を柔らかくする
とはいっても、高額で手に入れたピカピカの革靴を自分の手で無理に折り曲げてシワにするというのはやっぱり抵抗があると思います。
そのような場合はレザーソールに
【M.モゥブレィ】
ソールモイスチャライザー
をたっぷり塗り込んでレザーソールがお好みの硬さになるまで履き続けるのがいいと思います。
革底に栄養を与え、ソールの返りを良くしてくれます。
こちらの使用方法については過去の記事で詳しくご紹介していますので参考にしてみて下さい。
それではまた!
※ おススメ参考記事
合わせてお読み頂くと今回のお手入れに対する理解がより一層深まります。