店長青山です、
お客様よりメールでご質問を頂きました。
「革靴の履きジワが親指の付け根付近に当たり血が出てしまいます。
何か対処方法はありますか?」
という事でした。
ありがとうございます。ご質問の件について回答させて頂きます。
店長青山は基本的に革靴が足に当たって痛い時の対処方法が3つあると考えています。
● 当たる位置をずらす
● 当たる部分を柔らかくする
● 当たる箇所を保護する
この3つです。
今回はこれらについて現象が発生する理由からその対処方法までを詳しくご紹介して行きます。
あなたも現在、革靴が足に当たって痛い思いをしているかもしれません。
今回の対応方法のいずれか、もしくは全てを同時に行う事で今まで痛くて敬遠していた革靴が嘘のように気持ち良く履けるようになる可能性があります。参考にしてみて下さい。
また、今回の内容に関しては日本で初めて【Udemy】に革靴関連のコースを公開した店長青山の動画講座があります。最初の3つのレクチャーに関してはプレビューにて無料視聴できますので、ご覧下さい。
もうこれで革靴を履いても足が痛くならない!合わない革靴を簡単に調整する3つの対処方法
革靴に噛まれる原因とは?
まず、今回ご質問を頂いた現象ですが
『歩行の際に折り曲がった革靴のシワが親指に当たる』
という事ですね。
これはよく、
「靴に噛まれる」
などと表現されます。
「靴が屈曲するときにできる革のシワが甲の上部から足を押して痛みを発生させている状態」
です。
当たる部分の革の折れ具合が癖になっているため、歩行の度に毎回、同じ部分を圧迫して足を傷つけます。
親指の箇所だけに限らず、小指や甲の部分でもこのような痛みが発生する事が良くあります。
一歩踏み出すたびにギロチンのように上から足をザクザク傷みつけるものですからその辛さと言ったら大変です。
痛くて痛くて歩くどころではなくなってしまいます。
根本的にいうと、これに関しては
「靴と足との相性に問題がある」
という事になるかと思います。
足が靴に噛まれてしまう理由
靴の履きジワが足に当たる理由は一通りではないかと思いますが基本的に多いパターンとしては
足の甲の部分とアッパーの間に隙間がありすぎると、革にシワが深く入り強く足に刺さるようになる
事が多いです。
ですので、この現象に関しては甲の部分が薄い方に対して割りと多く見られます。
右足と左足の甲の高さが違う方はどちらかの足だけが靴に噛まれる、というのは良くあるお話です。
また、
キャップトゥに関しては先芯が入っているトゥキャップの後方、アッパーとの境目部分が刺さることもあります。
黄色い線の部分、トゥキャップの後方が足に当ると痛みが生じます。
ウイングチップの靴に関しては革を積み重ねたデザインの後方部分で折れ曲がり足に刺さります。
足が靴に噛まれる場合、シワが刺さる部分の革が固いと痛みを強く感じるのですがここも革が積み重なっている部分なのでとても痛いです。
また、意外な事ですがもう一つ理由として考えられるのが
「アウトソールが堅くて返りが悪い」
という事があげられます。
なぜそうなるのかというと
アウトソールが固くて曲がりにくいのでその分、アッパーの革が一か所に集中して折れ曲がり甲に刺さる
という現象が起きるからです。
グットイヤーウェルテッド製法の堅牢なデザインの革靴だとアウトソールがダブルになっていて返りが悪かったりします。
履き下ろしたての新品だと特にそのような状態です。
ソールが屈曲してくれないのでアッパーの革がその分までも折れ曲がってシワになり足に当たる、という事になります。
レザーソールの返りについては過去の記事を参考にしてください。
シワが当たって痛い靴と痛くない靴がある理由
この革靴のシワが当たって痛くなる現象ですが、どんなに試着をして慎重に靴を選んだとしてもなる時にはなってしまいます。
今まで革靴を履いて足が痛くなると
「革靴の選び方が悪かったんだ…」
と思って自分を責めていませんでしたか?
「オレの歩き方に問題があるんだろうか?」
と考えたりした事があるかもしれません。
でも、実はそれはあなたのせいではありません。あなたは何も悪くないのです。
それは革靴というアイテムの性質上、避けられないちょっとしたアクシデントだと思ってください。
知らない方は少し驚くかもしれませんが
同じ形の同じサイズの同じ革靴でも痛くなる靴とそうならない靴がある
のです。
不思議ですよね?
これはなぜかというと革という天然素材を使用して革靴は作られるからです。
革靴本体を全く同じ構造で作ったとしても、革自体が元々動物の皮膚ですので個体差があり同じ性質の物はありません。
あなたの肌と他人の皮膚が全く同じ性質である事はあり得ませんよね。
それと同じです。
作りが完全に同じでも革が違うと内部の繊維まですべて同様の並び方をしている訳ではありません。
なので、革靴の個体によってシワの入り方や当たり方が変わってくるのです。
靴によって痛みがある物とそうでないものがあるのは天然素材という革の特性があるからなのですね。
革靴に噛まれて痛い時の改善方法
と、いう事で革靴を履いている以上、どんなに気を付けていても革が当たって痛くなる可能性は誰にでもあります。
おろしたてで最初は痛くなかった靴でも履いているうちにシワが深くなり噛まれてしまう事も多くあります。
その場合の改善方法や対策をこれからお伝えしていきます。
では、先ほどお伝えした3つの対処方法で考えていきましょう。
まずは当たる位置をずらす方法です。
当たる位置をずらす
革靴の折りジワが深くなり刺さってしまう人は甲の高さが低い人に多い事は前述した通りです。
足の甲が薄いのでアッパーとの間に隙間が大きく開く事が原因となります。
ですので、最初の対処法はこの隙間をなくすために
「インソールを足裏に入れて甲の位置を高くする」
という方法です。
足の位置が上方へ変化する事でシワの入り具合や当たり方が変わり、痛みが出なくなる可能性が充分にあります。
自分でもとても簡単に行える方法ですので試してみる価値はあります。
インソールは市販の品でも数百円から数千円する物まで様々な種類があります。
足の裏全体に敷くタイプや前半分だけの中敷きなど色々とご自身の足に合った物を探してみるといいでしょう。
店長青山は開張足ですので足の横のアーチがつぶれてしまっています。
そのような場合にはアーチサポートの付いているインソールを使用すると足裏から持ち上げてくれるので快適ですし、空間も埋めてくれます。
店長青山的にはこちらのソールを使用したりしています。
【M.モゥブレィ】のR&D社が出しているインソールですが足の裏から3つのアーチをサポートして持ち上げてくれる上にメッシュ素材なので蒸れなくて快適です。
足の裏に存在する3つのアーチについてはこちらの記事で詳しくご紹介していますので参考にしてみて下さい。
当たる部分を柔らかくする
次の方法は足に当たる箇所の革を柔らかくして痛みを無くす方法です。
皮膚にぶつかる部分が木片のように硬ければ足から血が出てしまいますが、お菓子のマシュマロのようにぷにぷにだったらどうでしょう?
たとえ強く押し付けられても痛くありませんね。
なので、足の甲や指に当たる部分を少しでも柔らかくして痛みを軽減させるのがこの方法の目的です。
まず、一つの方法としては
【M.モゥブレィ】
デリケートクリーム
を当たる部分のシワにたっぷりと何回も塗り込みます。
通常のお手入れの際にはクリームをアッパーの外側部分だけに塗っていると思いますが、足の痛みを軽減させる際は靴の内部からも塗り込んでください。
靴の中に塗る際は、クリームを直接 指ですくって手で塗るとやりやすいです。
保湿をたっぷりと行いながらラノリン成分を皮革に浸透させる事で革のアタリをソフトにしていきます。
これを何回か繰り返しながら保湿、保革を充分にする事でシワの当たる感覚が弱くなります。
これを履きやすくなるまで続けます。
もう一つの方法は当たる部分のシワに皮革伸張剤を吹き付けて柔らかくする事です。
【M.モゥブレィ】
レザーストレッチミスト
こちらは、靴を履いて歩きだす前に吹きかけておく事で革が柔らかく伸びやすくなるスプレーです。
甲のヴァンプ部分の革に折り曲がり癖がついて足を圧迫する場合には、その癖を矯正する必要があります。
シワの入り方の癖を変える事ができれば足の痛みを取り除く事が可能です。
ストレッチミストを吹きかけ革を柔らかくしながら歩く事でシワの入り具合を変化させる効果を狙います。
また、自分で処置を行わずにお金を払って靴のお直し屋さんに持っていけば痛い部分にポイントストレッチャーを当てて革を伸ばしてくれるかもしれません。
こちらは通常「コブ出し」などとも呼ばれる専門器具でペンチのように革の一か所をつまんで伸ばします。
革を伸ばし柔らかくする事で履きジワの曲がり方を変化させます。
もしくは、靴修理屋さんだと靴の中に型を入れてから金づちで叩き、革を柔らかくしてくれるかもしれません。
つま先に入っている先芯が当たる場合などもハンマーで叩く事で形を整えると、状況が良くなる事があります。
ポイントストレッチャーで革靴を伸ばす
ちなみに、少し話はそれますが先ほど専門用具とご紹介したポイントストレッチャーは簡単に購入する事が可能です。
革靴を履くといつも決まって同じ個所、例えば左足の小指の付け根が痛くなるとか当たる場所が決まっている方も多いかと思います。
外反母趾などでいつでもどんな革靴でも痛みが出て困るような場合です。
そういった方はいっそのことこのポイントストレッチャーを買ってしまうのも良いと思います。
検討の価値は十分にあります。
ポイントストレッチャーは革を伸ばす器具なので靴に若干の型崩れがありますが、痛い個所の革をピンポイントで伸ばしたり柔らかくする事が可能です。
先ほどご紹介した レザーストレッチミスト などと併用するとさらに効果があります。
これを使うと革靴の一部を伸ばす事になるので、シルエットが不格好になるといえばなります。
しかし、いつも当たっていた箇所がほんの数ミリでも伸びるとこれまでの痛みがまるで嘘のように楽になり、革靴を履く苦痛から解放されたりします。
革靴の一か所がいつも痛い場合などはとても効果的です。
器具の値段もプロの靴の修理屋さんに頼む事を考えたら、1~2回使用すれば元がとれる程度の物です。
気に入って買ったはいいけど痛くて履けない革靴が下駄箱の中で何足も死んでいるのだったら失敗してもいいから自分でやってみるのもアリかもしれません。
だまされたと思って是非一度器具を試してみて下さい。
今、この瞬間も履かれる事なく家で眠っている革靴が束になって何足も蘇る可能性は否定できません。
当たる箇所を保護する
3つ目の方法としては革が当たって皮膚を傷つける箇所を保護して痛みを軽減させるやり方です。
●革靴にパットなどを貼って保護する方法
と、靴に対して処置をするのではなく
●シワが当たる部分の足に対して保護をする方法
があります。
革靴に対して行う方法としてはシワが噛む部分に対して靴の内部からレザーパッチを張ります。
修理屋さんに靴を持って行くと1000円前後でやってくれると思います。
足と靴の隙間を埋める事にもなりますし、深くシワが入る事を防いでくれます。
そして、もう一つの直接、足を保護する方法です。
これまでにもバンドエイドを何層にも貼ったり、厚めの靴下を履くなどしてスレや痛みを避けてきた事があるかもしれませんね。
実際、足を直接保護するやり方はとても簡単で効果的です。
新しかったり、慣れない靴を履く時などはあらかじめ痛みが生じる可能性を想定して保護用のパッドを持ち歩くべきです。
これはもう、絶対的に最初は持ち歩いた方がいいと思います。
途中で足が痛くなった時にパットがあった場合のありがたさは計り知れません。
痛くなる事が履く前から予想される、もしくは解っているのであれば出かける前の段階で足を保護しておきましょう。
特に親指が噛まれる場合などはジェルタイプのクッションが効果的です。
革靴を履き慣らすまでの間、洗って何回も再利用する事ができます。
1000円以内であの痛みから解放される事を考えると革靴を履く者として、常備しておくに損はないお品かと思います。
革靴がなじむまで痛くても履き続ける?
最後になりますがコアな革靴マニアの方だと
「革靴が最初痛いのは当たり前!痛みが無くなってなじむまで数年間でもかけて履き慣らす!」
という、意見の人も結構多いです。
「おしゃれには我慢が必要」
という考え方ですよね。
これはこれで素晴らしい革靴の愛し方だと思います。
ただですね、店長青山的には革靴を履く時あまりに痛みを我慢するのはお勧めできません。
洋服の場合はどんなにサイズが合わなくても、大きすぎても小さすぎてもケガになる事はないかと思います。
ジャケットが小さくて身体から血が出ることはないでしょう。
しかし、靴の場合は自分に合わない品だと容易に怪我をしてしまうのです。
無理して履き続けていると手術が必要な状態にまで簡単に怪我が悪化してしまったりします。
靴とは元来、歩行の際の足を守る為に作られた道具です。
足に怪我をさせたり痛みを生じさせてしまったら本末転倒だと個人的には考えています。
ですので、革靴を履く時にはできる限り痛みを避けて、心地よく楽しめる工夫をしてみて欲しいと思います。
繰り返しになりますが革靴に痛みが生じた場合には
● 当たる位置をずらす
● 当たる部分を柔らかくする
● 当たる箇所を保護する
これらの3つを検討してみて下さい。
この3つの方法のいずれかもしくは全てを同時に行い、痛みを軽減させながら履き続ける事で状況が改善する事も多いです。
参考にしてみて下さい。
それではまた!
もうこれで革靴を履いても足が痛くならない!合わない革靴を簡単に調整する3つの対処方法