【ENGLISH GUILD】の誤った評判
店長青山です、
当店は【M.モゥブレィ】の会社R&Dさんが日本の輸入代理店を務めているブランド
【ENGLISH GUILD】(イングリッシュギルド)
の正規取扱店です。
クロケット&ジョーンズやジョン・ロブなどでも使用されるイングリッシュギルドですが巷ではある製品に対して
「間違った認識がまかり通っている」
ようです。
今回はインターネットの弊害ともいえるゆがんだ「もののとらえ方」についてもお伝えして行きたいと思います。
クロケット&ジョーンズやジョンロブも利用する【ENGLISH GUILD】
イングリッシュギルドはイギリスの靴ブランドが製造過程で使用する業務用のシュークリームや仕上げ剤などをも生産しているフィニッシャーです。
フィニッシャーとは皮革製造などを請け負う業者の事を言います。
一般的にレザーの製造業者と呼ばれる会社には3種類あります。
●「 Tanner 」タンナー
原皮をなめして革にする業者
●「 Currier 」カリアー
なめされた革をタンナーから仕入れて来てそれに染色や加工を施して仕上げる業者
●「Finishers」フィニッシャー
タンナーやカリアーが作った革を仕入れた後、納入先の希望に合わせた色を染色したり型押し加工などをして製品化する業者
の三種類です。
今回のイングリッシュギルドはフィニッシャーとなります。
ノーザンプトンにある名の知れたシューメーカーは、ほとんどがイングリッシュギルドを利用、もしくはその製品を使用していると言っても過言ではありません。
イングリッシュギルドのクライアントには
CROCKETT&JONES
(クロケット&ジョーンズ)
Church’s(チャーチ)
GRENSON(グレンソン)
JOHN LOBB(ジョンロブ)
CHEANEY(チーニー)
Loake(ローク)
Tricker’s(トリッカーズ)
BARKER(バーカー)
など、
ロイヤルワラント(英国王室御用達)をも得ているような世界的に知られた名だたるブランドが軒を連ねています。
提供しているサービスや製品もポリッシュ、クリーナー、塗料、スプレー、軟化剤、仕上げ材、クリーム、ワックスなど多岐に渡ります。
●Rub-on Sole Finishes
●Sprayed Sole Finishes
●Waist Paints
●Upper Raw Edge Stains
●Heel & Edge Finishes
●Solvent & Water-Based Upper Sprays
●Solvent-Based Cleaners
●Water-Based Cleaners
●Water-Repellant Suede Sprays
●Cleaner Conditioners
●Polishable Antique Creams
●Polishable Belgravia Creams
●Leather Softener
●Pigmented Repair Finishes
●Crepe Sole Finishes
●Greasy Creams
●Wax Bars
●Stick Waxes
このように元々イングリッシュギルドはシューメーカーが使用する業務用製品などを製造していました。
しかし、イングリッシュギルド生産の【Bees Rich Cream】が2013年より日本の一般消費者向け製品として【R&D】さんより入手可能となったのです。
クロケット&ジョーンズやジョンロブが利用するようなメーカーが製造するシュークリームです。個人でも入手できるとあれば靴磨きマニアなら、一度試さずにはいられなくなります。
その後、実際の製品の良さゆえにビーズリッチクリームはシューケア業界で評判となり超一流品として知られる所となったのです。
Bees Rich Creamと【SAPHIR】クレム1925
先日このような事がありました。
店長青山の知り合いの男性は
「イングリッシュギルドこそが最も素晴らしい靴クリームだ!」
と、ビーズリッチクリームを愛用しています。
その彼が
「イングリッシュギルドの方がサフィールよりコストパフォーマンスがいいしね!」
と、言ったのです。
なぜそのように思うのか根拠を尋ねると
「サフィールのクレム1925と比べても同じ値段なのに内容量が多い!だからイングリッシュギルドのビーズリッチクリーム最高!」
との事。
詳しく聞くと、どうやらインターネット上でそのような情報が出回っていて彼はそれを受け売りでまき散らしているみたいです。
彼にその認識について店長青山の見解を伝えました。
この際ですからあなたにもお伝えしておきます。
「イングリッシュギルトの方がサフィールと比べてコストパフォーマンスが高い!優れている!」
という考え方は
はっきり言って間違い
です。
なぜ今回、店長青山がこのような事をわざわざあなたにお伝えするのかというと
ネットの情報に振り回されて頭でっかちになっている人が世の中に多すぎる
からです。
知識を求めてインターネット上で情報入手するという行動は本当に素晴らしい事だと思います。
しかし、インターネット上の情報というのはまさしく玉石混合です。
正しい知識もあれば間違っている情報も腐るほどあります。
安っぽいネットの情報を信じて変なこだわりやおかしな知識を、あたかもあなたの考えのように振りかざすのは危険です。
今回の話をよく噛みしめて彼のような恥ずかしい間違いを犯さないようにして下さい。
ビーズリッチクリームの主成分はワックス、油、水
ではここで店長青山の知り合いの彼が語ったコストパフォーマンスの根拠についてみてみます。
こちらがイングリッシュギルドのビーズリッチクリームです。
【ENGLISH GUILD】
Bees Rich Cream
このビーズリッチクリームの種類は【乳化性】です。
乳化性クリームというのはロウ分(ワックス)、油分、水分の3つの主要素を乳化剤で混合したクリームの事。
乳化というのは水と油のように本来は混じり合わない性質の物が混じりあった状態をいいます。
通常であれば合わない物を一緒にするので乳化剤として混じり合わせるために必要な性質の物を加えてあります。
クリームを見るとお菓子のカスタードクリームがさらに水分を含んだようなポッテリとした質感です。乳化性クリームという事もあり水分をたっぷりと含んでいます。
内容量は120㎖。
価格は2000円ですので1㎖当たり16.6円となります。
そしてこちらがサフィールのクレム1925です。
サフィールのクレム1925は種類が【油性】となります。
油性クリームというのは主な成分がロウ分(ワックス)、油分となります。
乳化性クリームとの大きな違いは『 水を含まない点 』です。
水分が入っていないのでクリームとして乳化させるために有機溶剤を使用しています。
中のクリームを見ると水分が含まれていないのでクリーム全体がネットリと凝縮されたような質感です。
内容量は75㎖。
こちらも価格は同じく2000円ですので1㎖当たり26.6円となります。
ここで店長青山の知り合いが言った、『一つの瓶あたりの量』で考えてみると1㎖当たりの差が出てきます。
●イングリッシュギルト
ビーズリッチクリーム
1㎖あたり 16.6円
●サフィール
クレム1925
1㎖あたり 26.6円
1㎖あたりで換算した結果10円もイングリッシュギルドの方が安くなりました。
これが彼の言う所の
「イングリッシュギルドビーズリッチクリームの方がサフィールCREAM1925よりも高コストパフォーマンス!」
という根拠となっています。
さて、この論理ですが果たしてどうなのでしょうか?
検証してみたいと思います。
イングリッシュギルド 高コストパフォーマンスの嘘
予めお伝えしておきますがイングリッシュギルドのビーズリッチクリームもサフィールのクレム1925もどちらも素晴らしいクリームです。
実際に店長青山はどちらも使用しています。あなたにはどちらのクリームも是非、使用して頂きたいと思います。
では、ここで先ほどの「コストパフォーマンスの誤り」についてお話していきましょう。
2つの例え話を出しますのでそれを踏まえて考えてみます。
まず、一つ目です。
想像してみて下さい。
あなたがとても気に入っている味噌汁があったとします。
味付けも大変好みですし塩分の濃さも本当に丁度良く絶妙なバランスで、これ以上の味噌汁はこの世の存在しないと考えています。
一杯 100円です。
その味噌汁ですが中に入っている味噌の量を変えず、お湯の量を2倍に増やしたらどうなりますか?
お値段は100円で据え置きです。
2杯分の味噌汁ができてお値段100円ですから量で考えたらコストパフォーマンスは2倍になっています。
高コストパフォーマンスの味噌汁へと変化しました。
もう一つ考えてみましょう。
あなたは甘いお菓子が食べたくなりました。
ここに一口サイズのチョコレートがあります。
そして夏祭りの屋台で販売されているような綿アメがあります。
どちらも100円です。
量(体積)で考えたら綿アメはチョコレートの30倍以上はありそうです。
なので、綿アメはチョコレートに比べてコストパフォーマンス的に30倍以上優れています。
さて、
この2つ論理を聞いてあなたはどう思いますか?
最初の味噌汁を考えてみましょう。
お湯を2倍にしたので量的にはコストパフォーマンスが倍になりました。
でも味はどうなるでしょうか?
最高に美味しいと感じていた味付けが2倍のお湯で薄められたとしてあなたは満足できますか?
2つ目のチョコレートと綿アメの比較についてはどうでしょう。
量(体積)が大きければ綿アメはチョコレートの30倍コスパに優れていると思いますか?
おかしいですよね?
この2つの考え方?
何がおかしいって
なんでコストパフォーマンスを「量」で比較検討しているのか?
という点です。
コストパフォーマンスというのは費用対効果の事です。
満足を得られる結果に対して幾らコストがかかったのか?
を、基準に考えなければいけません。
最初の味噌汁を「量」で考えたらコストパフォーマンスは倍になっていますが味付け的には半分に薄まっています。
本来あなたが求めている結果は
「美味しいみそ汁を飲みたい」
「大好きな味噌汁を食べて満足したい」
という事です。
その求めている結果に対してはお湯を倍に入れた事でむしろコストパフォーマンス的に悪くなったと言えるでしょう。
美味しくもない味噌汁を100円出して2杯飲んでも仕方がない訳ですから。
2番目のチョコレートと綿アメに関しても同じです。
この時に求めている結果は
「甘いお菓子を食べて身体的、感情的に満たされたい」
という事だと思います。
例え綿アメの1/30の大きさであったとしてもあなたがチョコレート大好きなのであればどうでしょう。
チョコレートの方が量が少なくても満足度が高い事でしょう。
コストパフォーマンス的にはチョコレートの方が優れている、という事になります。
この二つの例えで何をあなたにお伝えしたいかというとコストパフォーマンスを語るのであれば
『 量 』を基準に性質の違う2つのクリームを比較し優劣をつけるのは間違っている
と、いう事なのです。
美味しいと、すで満足していた味噌汁をお湯で2倍に薄めて
「コスパ的に倍になった!」
と言ったら、頭がおかしいですよね?
綿アメの方がサイズが大きいから
「チョコレートの30倍も高コストパフォーマンス!」
と言ったら変だと思いませんか?
コスパを量で比較検討していいのは
『 全く同じ商品内容にもかかわらず2つのアイテムの量や価格が異なっていた場合 』
です。
なぜならばその二つはパフォーマンス(効果、結果)が同じだからです。
水をたっぷり含んだ乳化性クリームと水が入っていない油性クリームを量で比べてどうするんですか?
一回のお手入れで使用するクリームの量や重さだって乳化性と油性では違うはずです。
もし、『イングリッシュギルド』と『サフィールのクレム1925』を比較してコストパフォーマンスを語るのであれば、
あなたが求めている結果に対して幾らコストがかかったのか?
で、優劣を考えなければいけないのです。
パフォーマンスが違う品にも関わらず、量を基準に
「 ㎖当たり何円 」
で良し悪しを語るのは、チョコレートと綿アメをサイズで比べて優劣を付けているのと同じです。
求めている結果を得られた上でそれに対して内容量が多く、パフォーマンスに対してのコストが安い、優れている、と感じたのであれば
その時に初めて
「量的にもコスパが良い」
と言って下さい。
ネットでシューケアや靴磨きの情報を探す時のコツ
このように、インターネットの情報を鵜呑みにして得意げにツウぶって知識をひけらかすと恥ずかしい事になりかねませんので注意が必要です。
インターネットで知識を得る事は今の世の中でとても重要なスキルです。
しかし、ただの情報、知識だけを追い求めると膨大な情報量の前に何を信じればいいのかがだんだん解らなくなってしまいます。
そうならないためには靴磨きの情報に限って言うとネットでネタを探す際、気を付けなければいけない点は、
「自分自身が何を求めているのか得たい結果を理解しておく」
という事だと思います。
例えばなのですが
「イングリッシュギルトのブラックは他のクリームと比べても色が黒い!」
という情報がインターネット上に出ています。
そして
「イングリッシュギルドのブラックは青色かかっていて他の黒色とは違う!」
というように記載されています。
確かにそれは正しい知識で間違いではないです。店長青山の知り合いの彼もそのように話をしていました。
「青色が入ったブラックの風合いがたまらない!だからイングリッシュギルドの黒いクリームを買いに来た。」
と。
ではここでまた店長青山の知り合いの彼のケースを例に
「自分が得たい結果を理解しておく事」
についてお話してみます。
靴磨きのクリームに求めている結果は?
良く聞いてみると今回彼がイングリッシュギルドの靴クリームを購入する目的は
『 来週末、初めて一緒に食事をする女の子とのデートに、きれいな革靴を履いて行ってカッコいいと思われたい 』
という事だったのです。
で、あるならば彼の本当の目的は
『 好きな女の子にカッコいいと思われて気に入られる事 』
です。
なので今回のデートに履いていく革靴に求められる本当に必要な事は
「革靴がきれいで清潔感がある事」
のようでした。
そうなってくると現時点の彼にとっては
「綺麗に清潔感がでるお手入れのために必要な製品」
が、最もコストパフォーマンスの高い品物です。
このように考えると、もしかしたら彼に本当に必要なのは
「靴クリームよりも先に汚れ落としのクリーナー」
という可能性もあるかもしれません。ここで冷静に考えてみると
「黒い靴クリームの中に青く見えるような成分が多く入っているかどうか?」
が、女の子に気に入られる要素として関係するかどうかは、はなはだ疑問です。
「 あなたの革靴、ブラックの色が普通より濃いよねー。何か違う気がするけど、どうして?
えっ? うそ!? 黒のクリームに青が多く入っているの!?
本当にー?(やだ、この人カッコいい。。。)」
という、女の子だったら話は別ですがその可能性は一般的にかなり低いように推測されます。
彼が求めている事が
「青色が強く入ったブラックの靴クリームを使って自分の靴を磨く事」
であれば、問題ありません。
ですが、そうでないのであれば今回デートに履いて行く革靴のお手入れに限って言うと、青色成分はあまり関係ないように思われます。
それよりも靴クリーナーで汚れをきちんと落としてから、お手入れをした方が清潔感のある革靴となり、求める結果に近くなるでしょう。
このように自分が得たい結果を理解しておけば、何を探せばいいのかがおのずとわかってきます。
インターネットで情報を探す際にも同じことが言えますので、是非参考にしてみて下さい。
ライトブラウン、ネイビー、ニュートラルなど7色展開
と、いう事でここまでお伝えしてきたイングリッシュギルドのビーズリッチクリームですが
「コストパフォーマンスに優れていない」
と言っている訳では決してありません。
あなたが求めている結果が
「靴に美しい色とツヤを出し革に栄養を与え、コンディションを整えながらお手入れしたい」
という事であればこのクリームほどコストパフォーマンスに優れている商品もなかなか無いと思います。
使う時のクリームの伸び、革に与えるツヤ感、色の発色の良さなど本当に素晴らしい使い心地と仕上がりをあなたと革靴に与えてくれる事でしょう。
求めている結果、パフォーマンスを確実にもたらしてくれるはずです。
【ENGLISH GUILD】
Bees Rich Cream
現在の所、イングリッシュギルドのビーズリッチクリームは
ニュートラル
ブラック
ライトブラウン
ミディアムブラウン
ダークブラウン
ネイビー
バーガンディ
の7色展開です。
ご自身のお手入れする革靴に合わせて選んで頂けるといいかと思います。
コードバンの補色にも使える
ビーズリッチクリームは革に栄養や潤いを与える目的としても最適ですが、スムースレザーのみならずコードバンの皮革にも使用できます。
コードバンに対する使い方は【M.モゥブレィ】のアイテムで言えば
と、同じ感覚で使用して頂ければいいかと思います。
ペネトレイトブラシでクリームをアッパーに塗り込んだ後、ホースブラシで円を描くように丹念にブラッシングをします。
ビーズリッチクリームの成分である蜜蝋が美しいツヤを出してくれます。
鏡面磨き、ハイシャインをする必要性を感じないほど綺麗な光沢感が出て来るのでお勧めです。
一つ、補足をするとイングリッシュギルドにはブランド専用のペネトレイトブラシである、
【スプレッドブラシ】というアイテムが存在します。
ビーズリッチクリームはイングランド製ですがこちらのスプレッドブラシはペネトレイトブラシと同じくドイツ製となっています。ペネトレイトブラシ比べると柄の部分が長いのが特徴です。
実はビーズリッチクリームの容器は【M.モゥブレィ】のシュークリームジャーなどと比べると大きく、高さもあります。
その為、通常の長さのペネトレイトブラシだとクリームを使い込んでいくうちに、柄の部分を持っている指が容器のフチに付いて汚れてしまうのです。
瓶の底の方のクリームを取ろうとすると指も容器の中まで入り込んでしまうからです。
その点、スプレッドブラシを使用すると指を汚さずにビーズリッチクリームを最後まで効率よく使い切ることができます。イングリッシュギルドのロゴマークも入っていて雰囲気も良いです。
クリームと合わせて使用するとお手入れの楽しみも一層と増しますのでお勧めの一品です。
と、いう事で今回はイングリッシュギルドのビーズリッチクリームとサフィールさんのクレム1925のコストパフォーマンスの比較について
お伝えしてきました。
どちらも素晴らしいクリームである事は疑いようのないアイテムです。
あなたも実際にこの二つのクリームを使用して実感してみて下さい。
革靴のお手入れに更なる楽しみが加わる事と思います。
それではまた!
※ お勧め参考記事
合わせてお読み頂くと今回の内容に対する理解がより一層深まります。
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