店長青山です、
前回の内容で
靴を磨いたり革靴の手入れをする
メリットについてご紹介しました。
今回は【靴磨き】と
【革靴のお手入れ】の
違いについてお伝えしていきます。
【靴磨き】と【革靴の手入れ】の違い
そもそも、【靴磨き】と
【革靴のお手入れ】に違いなど
あるのでしょうか?
これはその方が持つ
言葉のとらえ方、定義にも
よって変わってきます。
このブログ内で
記載されている意味付けが
必ずしも正しい、という
話ではありません。
ただ、これから更に話を
進めていく上において
このブログ内の定義が
決まっていないとお伝えする
内容に誤解が生じてしまいます。
なので、当ブログ内において
使用される言葉の位置づけとして
理解しておいてください。
生きていた動物の皮
靴磨き、革靴の手入れは
よく
女性の肌のお化粧、
スキンケア
に例えられます。
これは非常にわかりやすい
例えだと思いますので
当ブログ内でもこの
とらえ方を元にお伝えします。
ただその前に、
この考え方の前提条件となる
事実を確認させてください。
あなたがこれから革靴の
お手入れ、靴磨きを行う
革靴の素材。
それは
【 動物の皮膚 】だったもの
という事です。
一般的に牛の皮である
事が多いと思います。
それ以外にも
豚だったり、馬だったり、
ダチョウだったり、
トカゲだったり、蛇だったり、
ワニだったり、サメだったり、
ゾウだったり、トナカイ
だったりもします。
色々な素材が考えられますが
化学繊維などでできた
人工皮革でない限りは全て
【生きていた動物の皮】
という事なのです。
【皮】と【革】の違い
ちなみに
【皮】と書かれた物と
【革】と書かれた物は
同じ品ではありません。
「皮」というのは文字通り
動物の表面を覆っている
皮膚を剥がしたものです。
それに対し、
「革」というのは動物の皮膚
であった「皮」に対して
【なめし】という工程を施して
人間が使いやすいように
加工した物を指します。
革靴の手入れとは何か?
この事からわかるように
革靴の手入れというのは
考え方として動物の皮膚の
メンテナンスとなります。
要は
「肌の手入れ=スキンケア」
と同じ工程なのです。
一般的に多い革靴は
哺乳類である牛の皮膚を
加工したものです。
なので、基本的な
革靴の手入れの方法は
哺乳類である
【人間の肌の手入れ】
と同じ方法論を用いる事が
できます。
また、生きている
動物の皮は傷ついたりしても
自然治癒能力がありますが
靴の革は死んでしまっているので
自分で再生する事ができません。
靴の【革】はそのもの自体で
回復する能力を持ち合わせて
いないのです。
その為、人が手を加えて
状態を整えてあげる必要が
あります。
これが
【革靴の手入れ】
となります。
革靴のお手入れ
=SHOECARE(シューケア)
なのです。
CARE (保護する)
の言葉通り、革靴の
コンディションを整えて
守る事が目的となります。
靴磨きとは何なのか?
その革靴の手入れに
対して「靴磨き」という
言葉は一体何を指して
いるのでしょう?
これは文字通り
「靴を磨いて光らせる」
「革靴の見栄えを良くする」
事を意味しています。
外見上の良さを求めた
行為であり、その点だけで
言えば
「革のコンディションを
整える、向上させる」
という意味合いは
含まれていません。
第二次世界大戦後の日本において
進駐軍の革靴を高架下などで
キュッ、キュと磨いていた
【シューシャインボーイ】。
彼らが行っているのは
【靴磨き】ですね。
靴を磨いて綺麗に
見せるのが目的です。
彼らに靴を磨いてもらっても
革の状態が回復する訳では
ありません。
【磨き】と【手入れ】の
目的を分けて理解する
現在、日本において
「靴磨き」
「革靴の手入れ」
と言った場合、どちらの
言葉においても
「見た目を綺麗にする」
「革のコンディションを
整えて靴を長持ちさせる」
この両方の効果を期待して
手がける行為を指している
気がします。
もちろん、通常の場合
自分自身で靴磨きや
手入れをするのであれば
両方の効果を期待して
行いますので間違いでは
ありません。
しかし、
この概念を分けて
理解していない事により
目的に結びつかない行動を
とっている人が少なくない
のです。
女性のスキンケアを参考にする
革靴のお手入れは女性の
スキンケアと同じ考え方を
する、という事はすでに
お伝えしました。
では、
本当にざっくりとですが
女性の方はどのように
スキンケアをしているのか
考えてみましょう。
女性が一日のお出かけから
帰ってきたシチュエーションを
考えてみます。
お顔のお手入れを
するケースです。
まず何をするかというと
「洗顔」
ですね。
朝、お出かけ前にした
お化粧を「クレンジング剤」や
「洗顔料」などで落とし、
一日の間にかいた汗や
ついてしまった汚れも
取り除きます。
その次に何を
するのかというと
「保湿」
です。
肌の乾燥を防ぎ、潤いを
保つために「化粧水」を
パッティングやハンドプレスで
肌に浸透させます。
その次に
「油分を加える」
工程です。
「乳液」をぬって化粧水の
成分を肌になじませ、
油分で蓋をする事により
水分の蒸発を防いで
乾燥から肌を守ります。
「汚れ落とし」⇒
「保湿」⇒「油分」の順番
女性のスキンケアは非常に
理にかなった方法と順番で
行われています。
これと全く同じ手順で
「革靴のお手入れ=シューケア」
を執り行えばいいのです。
考え方の基本は
「しっかりと汚れを落とした後
油分の少ない物から加えていく」
事です。
順番が非常に大切
スキンケア同様
革靴のお手入れでも
重要なのは各過程を
行う順番です。
この順番を間違えて、先に
油分の多いクリームなどから
革に加えてしまうと、革に
油膜でフタをされてしまう
事になります。
そうすると意図した成分が
革に浸透しなくなるので
無駄となってしまうのです。
必ず基本の順番を
守るようにして下さい。
水分の多い物 ⇒ 油分の多い物
への順番です。
なぜならば、
油を先に入れると
水をはじいてしまうからです。
靴磨き用とシューケア用
製品は目的が違う
ここまでで、
靴磨きを目的とする行為と
靴の手入れをする事の
違いを理解して頂けたかと
思います。
この違いが解っていないと
困る点は、シューケア用品を
間違えて使用してしまう事です。
例えば【M.モゥブレィ】の
ベストセラー商品に
という商品があります。
こちらは女性のスキンケア
で言うと「保湿」専門の
クリームです。
要するに
「革靴に潤いを与え
乾燥を防ぐことを目的」
とするクリームになります。
地肌を整えるという
意味合いでは素晴らしい
商品です。
しかし、
保湿が主目的のクリーム
ですのでこれを革靴に
塗る事によって靴に輝きや
ツヤを出す事はできません。
もし、あなたの目的が
革靴を光らせてツヤを
出す事なのであれば
使用するべきアイテムは
デリケートクリームでは
ありません。
その場合は油性の
固形ワックスが適しています。
こちらの固形ワックスを
使用すれば革靴にキレイな
ツヤ感を出す事が
できるでしょう。
しかし、
こちらのワックスでは
革靴に栄養分や潤いを与える
事はできません。
むしろ、ツヤを出す事を
目的として革の表面に
ロウ分で膜を作ってしまうため
水分が入り込まなくなります。
この固形ワックスを
塗ったまま靴を放置し
続けると、革の乾燥が
進む結果となるのです。
このように
革靴の手入れ用品は
効果を期待する結果によって
使用するアイテムが違います。
あなたが目的とする
施策に対して誤ったケア用品を
使用すると、逆に悪い結果と
なる可能性があるのです。
その点、理解上ご注意ください。
これだけは使ってはいけない
シューケア用品
最近では靴磨きに関する
関心が日本でも大分
高まっているようです。
しかし、
一般的に日本のシューケアの
分野は欧米諸国に比べ
正しい知識がまだまだ
広まってません。
ここでは日本における
革靴の手入れの世界で非常に
よく使われてきた製品の
説明をします。
液体(リキッド)タイプの靴墨
です。
しかしこの製品は
靴の寿命を縮めたくないなら
絶対に使わないで下さい。
靴にヒビ割れを起こすクリーム
これは
【 塗るだけ簡単!靴にツヤ!】
【手軽にお手入れ!
革靴がピカピカに!】
といった、うたい文句で
爆発的に売れてきましたので
靴屋さんに限らず、スーパーや
ホームセンターなどでも
扱われてきました。
あなたも一度くらいは
見た事があるかと思います。
しかしこのクリーム
実際に革靴に使用を続けていると
そのうち表面の革が割れだして
裂けてきてしまうのです。
液体(リキッド)タイプの靴墨で
革靴の表面がひび割れる訳
実はこの液体タイプの
靴クリームの成分には
【 樹脂 】が入っています。
これは言ってみれば、
床をピカピカに仕上げる時に使う
コーディング剤と同じ様なもの。
これを革靴の表面に塗ると
樹脂が固まり、見た目的には
ツヤが出るようになります。
しかし、皮革の表面に
樹脂が貼りついて膜を作り
通気性が損なわれます。
シューケアは女性の
スキンケアと同じという事は
理解して頂いたと思います。
このリキッドタイプの靴墨を
使用するという事は女性の顔に
床に用いるコーディング剤を
塗り付けるようなものなのです。
顔の表面をふさいで固まり
膜を作ってしまうので
皮膚が呼吸できません。
当然、お肌はボロボロに
なってしまいます。
そしてこのクリームを
塗り続けると、固まった
樹脂の層が幾重にも重なり
革の柔軟性も失われていきます。
そうするとどうなるか?
お祭りの屋台に出ている
食べ物にりんごアメって
ありますよね。
あのアメは最初は熱を持ち
柔らかいけど時間が経つと
固まって硬質な形状で
留まります。
あのアメが固まって
革靴の表面に張り付いている
状態を想像してみて下さい。
硬質になったアメが
革に張り付いている上で
歩行の際に無理やり
曲げるのです。
結果はこうです。
歩くときに革靴に生じる
履きシワの部分から
「パキッ」と割れます。
実際に「パキッ」っという
音まではしないと思いますので
これはイメージなのですが、
歩く際に屈曲する部分から
ヒビ割れを起こすのは
事実です。
樹脂は表面に張り付いて
いるので割れる時に
下の革も一緒にひび割れします。
革がヒビ割れしてしまった
場合は中の繊維が切れていますので
完全に修復する事は不可能です。
この樹脂が入った液体の
靴墨で靴を手入れしてきた方の
革靴を見ると
靴の外側、
小指の付け根あたりの
革がひび割れたり
靴の内側、
親指の付け根あたりの
革がひび割れて切れたり
する症例を見かけます。
液体タイプの靴墨は
一度でも使うと革に
ダメージをもたらす事が
確実ですので使用を避けて下さい。
樹脂タイプのリキッドは落とせない!
では、
すでにもうこの手のタイプの
靴墨を使用してきてしまった
場合はどうすればいいのでしょうか?
まず、この手の靴クリームの
説明書きを読んでみると
「定期的に靴用クリーナーで
落として下さい。」
というような記載が
必ずあります。
ですが、
樹脂タイプの靴墨は
革の表面に貼りついて乾くと、
靴用クリーナーでは
落ちません。
実際にやってみたら
わかります。
「え、ウソだろ!?」
と思うかもしれませんが
本当です。
詐欺のような話です。
いや、実際にどんなに
やっても落ちない時には
詐欺の被害者になったような
気持ちになって落ち込みます。
まず市販のクリーナー程度で
剥がす事は無理だと
思ってください。
じゃあどうすればこの
固まってしまった膜を
落とせるのかというと
揮発性の高いベンジンや
シンナーなどを使用して
樹脂を溶かします。
でも考えてみて下さい。
女性のお顔の化粧品を
落とすのにラッカーシンナーを
使用するようなものです。
革靴の表面はボロボロになります。
ですので、
この手のクリームは最初から
使わない事が前提です。
もし、使用してしまったら
革靴の洗浄などを
請け負っているプロの
業者さんに相談されると
いいかもしれません。
使えない製品を選ばない為には
このリキッドタイプの
靴墨ですが、
「ただ単に光らせる事が
できればそれでいい」
という革靴以外には
使用しないべきでしょう。
ただ、
間違えて欲しくないのは
このような形の入れ物をした
靴墨であったとしても
きちんとした商品がある、
という事です。
ですので、この入れ物の
形で液状だからと言って
一概にダメだとは言えません。
ただ、
他の靴クリームに比べて
極端にお値段が安い品は
気を付けた方が良いでしょう。
100円~300円位で販売されている
物があった場合は、裏に記載の
成分を良く確かめた上で
購入するようにしましょう。
一般的にシューケア製品を
販売している有名なメーカーの
品であれば大丈夫かとは
思います。
この辺りは自己責任で
確認の上、自分の目的に合った
品を選ぶようにして下さい。
革靴をダメにする製品が
扱われてきた理由
ここまでの話であなたは
疑問に思いませんでしたか?
「そもそもなんで、そんな
革靴をダメにしてしまう
商品が扱われているのか?」
という事です。
答えは簡単で
「 ものすごく売れるから! 」
という理由です。
これは日本のシューケア業界に
問題があると思います。
革靴を長持ちさせるケア用品を
お客様にきちんと説明して
取り扱うことなく、
「塗るだけ簡単!
革靴がピカピカに
きれいに!」
というお手軽商品を
「手っ取り早く
たくさん売れて儲かるから」
という理由で長年販売し
続けてきました。
また、これが
受け入れられやすい
土台があったと店長青山は
考えています。
日本の革靴のお手入れと
言うのは戦後長い間
「靴磨き」
の事を指していたのです。
これには理由があったと
思います。
恐らくなのですが
戦後、日本を統治した
GHQ(進駐軍)の影響かと
推測しています。
靴を磨く行為は
戦後急速に日本人の間にも
認知された訳ですが
それは進駐軍の兵隊さんが
革靴を磨く文化を
持っていたからです。
ところが基本的に
軍隊で行う靴の手入れと
いうのは、
【 靴を磨き上げる 】
という所に目的があります。
要するに革のコンディションを
整える事が目的ではなくて
靴を光らせる事が目的なのです。
軍隊という世界は
どの国でもそうですが
最も規律を重んじる場所です。
兵規を乱す事がないよう
身だしなみ一つとっても
厳格に定められています。
軍靴においては
ピカピカに磨き上げられ
ホコリ一つないような状態が
求められるのです。
強い軍隊ほど平時下おいて
革靴がピカピカに磨き
上げられている、という
話があるほどです。
なので、
進駐軍の兵隊さんは
靴を磨く文化を日本に
持ち込んだ訳ですが
それがそのまま日本における
靴のお手入れの文化として
馴染んでしまったのだと
店長青山は考えています。
この、
「靴のお手入れ
=
靴をピカピカにする」
という認識が
後押しする形となり
「お手軽簡単に
靴をピカピカにできる」
という、セールストークを
掲げ革靴をダメにして
しまう商品が爆発的に
販売されてきました。
でも、
一般の人からしたら
それしか選択肢が
なかったんです。
今みたいに情報が
無かったからです。
それは知っていたはずの
シューケア業界が黙って
粗悪な商品を利益の為に
売り続けてきたからです。
なので、
せっかく良い革靴を買っても
そのうち甲の部分から
切れてきてしまって
「仕方がない、、、」
という事で
靴を捨ててきたのが
高度経済成長の最中、
必死に働いて日本を支えて
来てくれたサラリーマンの
方達だったんですね。
とても残念な事です。
ただ、今では
情報があります。
あなたは正しい情報を手にして
粗悪なシューケア用品を
購入しないで下さい。
それではまた!
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